【目的】摂取したカリウムは小腸で吸収され、門脈、肝臓を経て、体循環に入る。その結果、血中カリウム濃度が上昇し遠位尿細管が刺激され、カリウムの尿中排泄が促進される。肝門脈領域にカリウムセンサがあり、血中カリウム濃度が上昇せずに尿中へのカリウム排泄が促進される「予測制御」が存在することも考えられている。そこで、投与量、投与方法を変えてカリウムを投与し、それらの結果を比較することで「予測制御」機序が存在するか否か検討した。【方法】被験者にカリウムを経口もしくは静脈投与し、血清中カリウム濃度およびナトリウム濃度、尿中カリウム、ナトリウムおよび塩素排泄量、尿中クレアチニン排泄量を経時的に測定した。【結果】カリウム投与によって、血中カリウム濃度が上昇した。尿中カリウム排泄量は、カリウム投与後速やかに増加した。カリウム排泄量増加と同時にナトリウム排泄量、塩素排泄量も増加した。尿中クレアチニン排泄量は、カリウム投与前後でほとんど変化しなかった。静脈および経口からのカリウム投与の比較では、投与後の血清中カリウム濃度上昇と尿中カリウム、ナトリウムおよび塩素排泄量増加に関して、両者に大きな差が見られなかった。【結論】低量のカリウム投与でも速やかに血中カリウム濃度が上昇し、尿中へのカリウム、ナトリウムおよび塩素排泄が同時に亢進されることがわかった。この研究では、血中カリウム濃度が上昇せずに尿中へのカリウムが排泄される現象はみられず、「予測制御」の存在は確認できなかった。
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