研究概要 |
能動性皮膚血管拡張が発汗神経により仲介されるか否かを,皮膚面における血流と発汗量の二次元的な分布を解析することにより解明を試みるのが本研究の目的である。 研究I:報告者らは以前に,発汗神経活動に同期して一過性に皮膚の血管拡張が生じることを証明した。この血管拡張が汗腺部分に限局するかどうかを追究するため,レーザードップラー血流計を用いそのプローブを細かい間隔で走査して,血管拡張が汗腺に一致して生じるか否かを検討することを目的とした。本年度は,特殊プローブを試作し同時に4カ所から皮膚血流を記録しながら手動でプローブを任意の位置を移動させて,個々の部位で血管拡張反応が出現するか否かを観察した。主として前腕で測定したが,どの箇所にプローブを移動させても同様な皮膚血管拡張反応が観察され,限局的な1点で血管拡張が認められるとの結果は得られなかった。この結果は,発汗神経活動と同期性の血管拡張反応は汗腺周囲に限局したものではないことを示唆する。次年度は,汗腺の密度の低い部分を選び,実体顕微鏡を用いて個々の能動汗腺の位置を確認し,汗孔部とそこから離れた皮膚との間で血流反応が異なるか否かを検討する。 研究II:皮膚血流の多寡と発汗活動の多寡とが空間的に関連するか否かを広い皮膚面内において検討するのが目的である。マッピング手法により発汗量の空間的分布を調べ,血流画像化装置により皮膚血流を走査して両者の類似性を調査した。今年度は7チャンネルの発汗同時記録装置を試作し,皮膚面の36または72点の発汗量を求めて皮膚面の発汗量地図を構築した。試作されたの地図は著しい個人差を示した。同時に記録した皮膚血流走査画像から血流の多い部位と比較すると,数例において発汗量の多い部位と一致していたが一致しない例もあった。来年度は,発汗量地図の精度を向上させて信頼性の高い分析を行うとともに,下肢陰圧負荷(LBNP)により発汗分布や皮膚血流分布が暑熱負荷時と異なるか否かを検討して皮膚の血管拡張と発汗活動との間に機能の解離が生じるか否かを検討する。
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