研究概要 |
1.発汗量と皮膚血流の二次元的な分布を検討することにより能動性皮膚血管拡張の神経機構を検討した。 2.レーザードップラー血流計のプローブを1mmの間隔で10×5点のポイントをメッシュ状に移動させながら皮膚血流量を記録し,各点で皮膚血流反応に部位差が生じるか否かを検討した。その結果,発汗波と同期した血管拡張反応はどの部位でも認められ、部位差がなかった。 3.着色法により個々の能動汗腺の位置を同定し、汗腺部位とその周辺部位について皮膚血流反応に差があるか否かを検討した。その結果、汗腺部位もその周辺部も一律に血管拡張反応が認められた。 4.やや広い皮膚面(背部の20×20cm)に対して、着色法と、換気カプセルを用いた多点の同時定量法により作成したマップの2つの方法により発汗活動の二次元的分布を求めその各々について、レーザードップラー法による血流スキャンニング装置(Moor, LDI)により得た皮膚血流のマッピング画像と対比した。その結果、多くの例では発汗の多い部位と血流の多い部位は一致しなかった。若干の例では発汗の多い部位では血流が少ないという逆の関係が認められた。 5.以上の結果は、能動性皮膚血管拡張は皮膚の全面に同期性に発現することを示している。したがって,皮膚血管拡張の神経機序として,従来推測されている発汗神経による機序(ペプチドを介する機序)も否定できないものの,皮膚血管拡張神経を介する機序の重要性が高まった。 6.血流測定(レーザードプラー法)における分解能の向上や、発汗量のマッピング精度の改善など技術的な問題点を解決する必要があるが、今後は血管拡張神経の存在も重要視した皮膚血管調節機構の検討が迫られる。
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