研究課題/領域番号 |
12470019
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
乾 誠 山口大学, 医学部, 教授 (70223237)
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研究分担者 |
高 知愛 山口大学, 医学部, 助手 (70314797)
山田 康枝 山口大学, 医学部, 助手 (00166737)
木村 佳弘 山口大学, 医学部, 講師 (90301308)
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キーワード | チャネル / 蛋白質間相互作用 / NMDA受容体チャネル / PSD-95 / チロシン燐酸化 / Zn^<2+>感受性 |
研究概要 |
本研究は、ユニークな活性化機構を有するイオン・チャネルを対象に、蛋白質間相互作用によるチャネル制御機構を分子レベルで解明するとともに、新たな薬剤の標的を見出すことを目的とする。本年度は、記憶・学習などの脳の可塑性の形成に重要な役割を果たすNMDA型グルタミン酸受容体のうちユニークな活性化機構を有するNR1/NR2Aサブタイプ受容体チャネルにつて、NR2Aに結合する蛋白質PSD-95との蛋白質間相互作用によりどの様に制御されるかの検討を行った。 NR1/NR2Aチャネルは、グリシン存在下にグルタミン酸によって活性化されるが、PKCによる燐酸化によって著明に促進される。しかしながら、PSD-95が結合したチャネルではこの促進は認められなかった。これは、以前に私たちが報告したPSD-95のNR1/NR2Bチャネルヘの効果と同様であった。これに対し、PSD-95はNR1/NR2Bチャネルのグルタミン酸感受性を低下さるが、NR1/NR2Aではこの様な効果は認められなかった。 NR1/NR2Aチャネルは、NR1/NR2Bチャネルと異なりSrcキナーゼによるチロシン燐酸化によってチャネル活性が亢進するというユニークな性質を有している。このSrcによるNR1/NR2Aチャネル活性化に対するPSD-95の効果を調べた結果、PSD-95との相互作用によってSrcのNR1/NR2Aチャネル活性化作用が完全に消失することが明らかとなった。SrcによるNR1/NR2Aチャネル活性化作用は、Zn^<2+>によるNR1/NR2Aチャネル抑制を解除するためであることが知られている。そこで、NR1/NR2AチャネルのZn^<2+>感受性に対するPSD-95の効果を調べたところ、PSD-95によりZn^<2+>感受性の低下が認められた。しかしながら、PSD-95が結合したNR1/NR2Aチャネルが抑制を受けているZn^<2+>濃度においてもSrcによる活性化が認められないことから、PSD-95によるNR1/NR2Aの抑制作用はZn2+を介さないことが明らかとなった。 以上の結果から、NR1/NR2AチャネルはPSD-95との相互作用によりチャネル特性が大きく変化すること、NR1/NR2Bに対するのとは異なった制御をかけていることが明らかとなった。
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