研究概要 |
全身の血圧は主に外径数十ミクロン程度の一層の平滑筋細胞からなる末梢抵抗血管の緊張度の変化によって効果的に制御されていると考えられているが、最近我々はモルモットの小腸粘膜下動脈や腸間膜動脈最終分枝以降の末梢血管部では、既知のCa2+チャネルとは全く違う生物物理学的・薬理学的性質を示すnifedipine非感受性、電位依存性Ca2+チャネル(NI-CC)の割合がほぼ100%になることを明らかにした。本研究ではこのNI-CCについて以下のことを明らかにした。 (1)ラット、ウサギの末梢血管部にもNI-CCとほぼ同一の性質を示すCa2+チャネルが高密度に存在する(Circ Res85,596-605,1999;JPn. J. pharmacol.82,82P、論文投稿中)。 (2)このチャネルは末梢血管交感神経の主要神経伝達物質ATPによっでプロテインキナーゼA及びCによるリン酸化を介した二相性制御(低濃度で増強、高濃度で抑制)を受けている(J physiol, in press)。 (3)このチヤネルを介したCa2+流入が内圧負荷時の末梢細動脈の緊張性(張力)や血管径の制御に寄与している(Jpn. J. Pharmacol.82,82P、論文投稿中)。 (4)現在入手可能なペプチド毒(w-contoxin GVIA, MVIIC, w-agatoxin IVA, SNX482,sFTX3.3)や有機化合物のうち、mibefradil(Ro40-5967;F-Hoffman La Roche)及びSUN5030化合物(Snp200001,.200002,200003;サントリー生物学研究所)のみがこのCa2+チャネル活性を完全に抑制するが、この効果は他の電位依存性Ca2+チャネルに比し3倍以上の選択性を示さないことが明らかになった(第43回平滑筋学会総会発表、論文準備中)。 本研究の主要目的の一つである天然毒スクリーニングに基づいた選択的阻害薬の検索・開発はこれまでのところ有効なペプチドが得られていない。今後も検索を継続する予定である。
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