研究課題/領域番号 |
12470030
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
戸谷 敬子 慶應義塾大学, 医学部, 助手 (30124952)
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研究分担者 |
向井 邦晃 慶應義塾大学, 医学部, 助手 (80229913)
三谷 芙美子 慶應義塾大学, 医学部, 専任講師 (60041852)
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キーワード | 副腎皮質 / ステロイドホルモン / 細胞分化 / 組織形成 / 器官形成 / 幹細胞 |
研究概要 |
哺乳動物の副腎皮質は、球状層、束状層、網状層の3層から成る。我々は、近年3層に加えて、球状層と束状層の間に未分化な細胞層(以下、未分化細胞層)を新たに見い出した。この細胞層の種々の性質から、未分化細胞層は、多能性の幹細胞を含み、それが分化・増殖して球状層と束状層の細胞が生じるとの仮説を提唱した。昨年度、温度感受性SV40T抗原遺伝子をトランスジーンとして持つマウス副腎から、未分化細胞層と同様な分化形質を示す細胞株AcA101を樹立することに成功した。未分化細胞株AcA101は、非許容温度でdibutyryl cAMPの存在下で培養することにより、束状層マーカー遺伝子の発現が誘導されることが判明した。従って、未分化な状態から、束状層様に分化することが判明した。未分化状態の副腎皮質細胞には、細胞の増殖・分化の制御に重要な分子が発現している可能性がある。そこで未分化細胞株に高発現し、分化した細胞に低発現する遺伝子の同定を行った。その結果、新しい蛋白質を同定した。この蛋白質は、分泌シグナル、EGF様配列、プロカテプシンB様配列から構成された。このような構造は、本蛋白質が、細胞外において情報伝達を行うこと、細胞外基質等の分解に関与することが推定された。次に、本蛋白質を束状層様に分化した細胞株に発現させ、細胞の分化状態を解析したところ、コルチコステロン合成における最終段階の酵素P45011betaの発現が抑制された。この結果は、新規蛋白質の発現により、細胞層特異的なステロイド合成酵素遺伝子の発現が抑制されることを示す。従って、我々が未分化細胞株を用いて同定した新しい分泌蛋白質は、少なくともin vitroで最終分化形質を抑制しうることが示された。本蛋白質は、他の臓器にも発現しており、今後の研究により組織一般の形成、維持における本蛋白質の役割の解明が重要と思われる。
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