研究概要 |
1.AZ1欠損マウスの死因解析:C57BL/6J遺伝背景において、AZ1のホモ欠損体は大部分が胎生13.5〜16.5日に致死となることを明らかにし、その死因解析を行った。肝臓の低形成が最も初期に認められる異常であり、肝臓のオルニチン脱炭酸酵素(ODC)活性とプトレッシン含量が高値を示した。ホモ欠損体胎児肝の解析により、胎生12.5〜13.5日では肝造血系細胞がアポトーシスを伴って減少し、胎生14.5〜15.5日では血管内に未成熟な赤芽球細胞の増加を伴う貧血を認め、胎仔肝の二次造血が影響を受けたと結論された。またAZ1欠損マウスの致死性に対するmodifier遺伝子の存在が示され、その同定のため日本産モロシヌス系由来MSKRマウスの遺伝背景を持つコンジェニック系統を確立した。 2.AZ1欠損培養細胞における検討:初代培養胎児線維芽細胞とその不死化細胞を用いた検討により、AZ1欠損細胞ではポリアミン添加時のODC抑制の遅延と、AZ2によると考えられるポリアミン調節の部分的代償が認められた。またこのことからAZ2にもポリアミン依存性のODC抑制およびポリアミン取り込み阻害活性があることが示唆された。 3.AZ2ノックアウトマウスの解析:AZ2ホモ欠損個体は明らかな表現型を示さなかった。AZ1,AZ2二重欠損体は胎生10.5日に全身の発生遅延を呈し、胎生14.5日までに全例死亡することが明らかになった。二重欠損体の形態学的変化は肝臓における二次造血開始前に始まることから、死因はAZ1単独欠損体とは異なると結論された。 4.AZ1欠損と発がんの関連:AZ1のホモ欠損個体は腫瘍の自然発生の有意な増加を示さなかったが、APCに変異を持つMinマウスとの交配実験において、AZ1のヘテロ欠損がMinマウスの腸管腺腫の数と大きさを増加させることが明らかになった。
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