研究概要 |
細胞周期, 特にG2/M期を制御するキナーゼAurora-Bに対するモノクローナル抗体を作製した。Aurora-BはG2/M期にその蛋白質発現が増強するが, Aurora-Aより広範な期間にその発現を認めた。その局在は分裂中期まで動原体にあり, その後には中間帯に移行し, 終期〜細胞質分裂期には中間体に集積することを示した。 さらに, 1.脱リン酸化酵素阻害剤であるオカダ酸によりAurora-Bは濃度依存的に活性化された。 2.Aurora-Bはオカダ酸感受性の脱リン酸化酵素のうちPP1, PP2と結合したが, PP5とは結合しなかった。 3.Aurora-BはPP1の三種類すべてのサブタイプと結合することを明らかにした。このうちPP1γ1は分裂期に動原体にも存在することから, 生体内でAurora-Bと結合していると考えられる。 4.PP1またはPP2はin vitroにおいてAurora-Bの活性を濃度依存的に抑制した。 5.ヒストンH3を基質とした変異導入解析により, Aurora-Bによるリン酸化コンセンサス配列を決定した。Aurora-BはヒストンH3の8番目のアルギニンを認識し10番目のセリンをリン酸化した。Aurora-Bはアルギニン依存性のキナーゼであることが明らかになった。 6.Aurora-BによるヒストンH3のリン酸化は10番目ばかりでなく28番目のセリンにも起こることをin vitroにおいて証明した。 以上, Aurora-Bのリン酸化コンセンサス配列が決定されたことにより, 今後細胞周期を制御する新しい分子機構や癌化に至る機序の一端が解明されると期待される。
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