研究概要 |
細胞の腫瘍化及び悪性化はチェックポイントを構成する分子の機能不全が原因となって生じることが明らかになってきている。つまり、チェックポイントに障害をもつ細胞ではゲノムが不安定となり,細胞が分裂を繰り返すたびに、遺伝子や染色体に変化が生じ、腫瘍細胞の多様性や悪性化を引き起こす原因となっていると考えられる。私達は酵母及びショウジョウバエのチェックポイント構成分子に相同性のあるヒト遺伝子を同定しているが、それらの分子の高等生物細胞における機能は全く不明である。ニワトリBリンパ細胞株DT40は、高等真核細胞で唯一ターゲットインテグレーションが高頻度に起こる細胞であり、本細胞を用いることにより特定の遺伝子をin vitroで破壊し、その機能を詳細に解析することが可能である。本研究は、DT40細胞を用いて順次これらの遺伝子のノックアウトを行い、高等真核細胞における機能について解析することを目的とした。以下に本年度の成果を要約する。 1)Cdh1はショウジョウバエ、酵母において、分裂期サイクリンをユビキチン化するAPC (anaphase promoting complex)の一部を構成することが分かっており、高等生物細胞では他にも重要な標的分子が存在すると考えられている。DT40細胞においてCdh1遺伝子を破壊し、(1)Cdh1遺伝子(-/-)細胞が生存可能であること、(2)サイクリンA及びサイクリンBのG1期における発現が高くp27の発現誘導剤であるラパマイシンで処理してもG1期で停止しないこと、(3(DNAダメージによって誘導されるG2チェックポイントが障害されていることを見出した。 2)ショウジョウバエ分裂期キナーゼの一つであるwartsのニワトリホモログを不活化したDT40細胞を樹立した。WARTS(-/-)細胞は生存可能だが、M期からの脱却速度が速く、細胞分裂に異常が見られることを見出した。
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