研究概要 |
1.昨年度には146例の胸腺上皮性腫瘍について新WHO分類で組織型を決定し、腫瘍の浸潤性と免疫学的機能を解析して発表した(Am J Surg Pathol,2001).今年度には胸腺腫のみを273例と増加し、組織型が実際の予後と関連するか否かを検討した.WHO分類A,AB,B1,B2,B3の各型において、(1)浸潤性腫瘍の割合は11.1%,41.6%,47.3%,69.1%,84.6%であった.これは昨年度の症例の結果とほぼ同様である.(2)腫瘍の浸潤が大血管に及んでいた割合は0%,3.9%,7.3%,17.5%,19.2%であった.(3)患者の20年生存率は100%,87%,91%,59%,36%であった.20年生存率を正岡の病期分類でみると病期I, II, III, IVa, IVbについて各89%,91%,49%,0%,0%であった.多変量解析で正岡の病期分類とWHOの組織分類が有意な独立予後因子で、年令、性別、重症筋無力症の有無、腫瘍完全切除の有無、大血管への浸潤は独立予後因子とはならなかった(Cancer,2002). 2.新WHO分類に含まれていない組織型として、間質に豊富なBリンパ球浸潤を伴う微小結節性の胸腺上皮性腫瘍を解析した.このようなパターンはこれまでに紡錘細胞型腫瘍(1群)のみが報告されたが、我々は紡錘細胞と多角細胞の混合型(2群)と細胞異型を伴う多核細胞型(3群)、さらにはリンパ上皮腫様癌(4群)に至るスペクトラムの存在を発表した.細胞異型度、MIBー1陽性細胞、p53陽性細胞が1-4群の順に増加した.腫瘍巣中の未熟T細胞は1,2群の全例と3群の多数例にみられたが、4群では認められなかった.In situ hybridizationによりEBウイルスを検索したが、EBウイルスゲノムは半数の症例で少数の間質リンパ球にのみ陽性であり、腫瘍発生への関与は証明できなかった(Histopathology,2001). 3.組織学的に上皮成分が明らかでなく、横紋筋肉腫に似る稀な胸腺腫瘍2例につき免疫組織化学、電顕ならびに核型を解析して肉腫様癌であることを証明し、発表した.核型はder(16)t(1;16)(q12;q12.1)の異常を呈し、既報の胸腺癌での異常型に類似した(Histopathology,2002)
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