研究概要 |
1.胸腺のMALTリンパ腫を臨床病理学的ならびに分子病理学的に検討した.本型は低悪性度のリンパ腫であるが、胸腺では極めて稀であり、文献上、症例報告が散見されるのみであった.我々は、HongKongのDr.Chanら、また、日本リンパ腫研究会のメンバーと共同研究を行った.即ち、個々に症例報告された日本人症例8例、中国人症例1例に、新たに日本人症例と中国人症例各3例の計6例を加え、合計15症例につき病理標本を入手して解析した.本病変は臨床的には中高年女性に優位に起こり、自己免疫性疾患、特にシェーグレン症侯群に合併することが多く、予後は全般に良好であった.病理学的には嚢胞形成が目立ち、嚢胞上皮やハッサル小体とlymphoepithelial lesionsを形成した.IgA産生性の形質細胞浸潤が特徴的で、EBウイルス感染やAPI2-MALT1キメラ遺伝子形成は陰性であった.これまでの報告と総合すると、胸腺MALTリンパ腫の8割はアジア人に起こることが分かった(Am JPathol,2002). 2.胸腺癌を含む胸腺腫53例をWHO分類で分け、放射線科医との共同で、各亜型のCT所見を検討した.A型胸腺腫が他の型に比し、円形で辺縁平滑であり、C型胸腺腫が最も不整な辺縁像を示した.B1,B2,B3型には他の型に比し、石灰化が目立った.さらにコントラスト剤による増強度や増強パターンを解析した.その結果、ある程度の限界はあるものの、WHO分類の胸腺腫亜型とCT所見に相関が得られた(Am J Roentgenol,2002). 3.WHOの腫瘍分類シリーズで「Pathology and Genetics of Tumours of the Respiratory Tract, Mediastinum and Thymus」の出版が企画され、胸腺におけるType A Thymoma, Type AB Thymoma, Micronodular Thymoma, Lymphoepithelioma-like Carcinoma, Sarcomatoid Carcinomaの各章において共著者として執筆に参画した(in press).
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