研究分担者 |
安田 政実 東海大学, 医学部, 講師 (50242508)
竹腰 進 東海大学, 医学部, 講師 (70216878)
吉村 眞一 東海大学, 医学部, 講師 (30230808)
井上 金治 埼玉大学, 理学部, 教授 (50091963)
梶原 博 東海大学, 医学部, 助手 (20317754)
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研究概要 |
今年度は、機能性下垂体腺腫に比し、機能分化についての知見の少ない非機能性下垂体腺腫に焦点を絞り、転写因子の解析を行った。対象は、これまで収集したヒト非機能性下垂体腺腫約50例及びLloyd博士により樹立されたヒト非機能性下垂体腺腫由来細胞株HP75とし、現在までに判明している下垂体関連転写因子(Ptx1,Lhx3,Prop-1,Pit-1,GATA-2,SF-1,DAX1)および共役因子であるレセプター(Estrogen receptor : ER,GHRH-R,GnRH-R,)などにつきRT-PCRおよび免疫組織化学(IHC)を対象に検討した。以下に、これまで得られた知見を列記する。 1.非機能性腺腫では、RT-PCRおよびIHCにより全症例が、多くの転写因子を同時に発現していることが判明した。特にIHCでは、転写因子は核に染色されていた。また、RT-PCR,IHCによる各種ホルモンの発現の検討では、αサブユニット(SU),FSHβSU LHβSUなどゴナドトロピン産生への機能分化が顕著であった。転写因子、共役因子の組み合わせでは、Lhx3,DAX1,Prop-1,SF-1,GATA-2などゴナドトロピンへの分化に関連する組み合わせの頻度が高かった。また、頻度は低いものの他のホルモンヘの分化(GH,PRL,TSH,ACTHなど)も認められ、中には極少数ではあるが、細胞系譜(GH-PRL-TSH,ACTH,FSH/LH)を超えた分化を示すものも存在した。 2.非機能性下垂体腺腫由来細胞株HP75を対象とした解析では、HP75細胞がACTH(POMC),FSHβSU,αSUなど細胞系譜を超えた分化を示す細胞であり、転写機構としてGATA-2,DAX1,NeuroD1,Tpitなど、ゴナドトロピンとACTHの産生に携わる転写因子を発現していた。HP75細胞は、稀な機能分化を示す細胞であり、その分子機構として細胞系譜を超えた転写因子の発現(abberant expression)を証明した。 この様に、本年度は、非機能性下垂体腺腫の、細胞レベルでの機能分化とその分子機構を明らかにした。
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