研究課題/領域番号 |
12470051
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
守内 哲也 北海道大学, 遺伝子病制御研究所, 教授 (20174394)
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研究分担者 |
浜田 淳一 北海道大学, 遺伝子病制御研究所, 助教授 (50192703)
多田 光宏 北海道大学, 遺伝子病制御研究所, 助教授 (10241316)
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キーワード | LECラット / NF-kB / 転写 / p53 / グルタチオンペルオキシダーゼ |
研究概要 |
我々は肝炎・肝癌の自然発症モデルであるLECラットにおいて遺伝的な転写因子異常を見い出した。このラットにはNF-kBシステムに異常があり、この異常を引き起こす遺伝子を同定することを第一目的とした。そしてこの異常遺伝子を同定した後、そのコンジェニックラットを作製することを次の目的として実験を行った。 LECラットでは細胞型グルタチオンペルオキシダーゼ(GPx1)活性ならびにmRNA発現が、先天的に肝特異的に低下していることが知られている。そこでLEC肝でのGPx1活性低下の機序を解析した。LEC肝由来細胞株(93C13細胞)と対照LEA肝由来細胞株(93A16細胞)を用いてプロモーターのルシフェラーゼアッセイを行った。抗癌剤エトポシドでp53を誘導すると、p21(WAF1/CIAP1)遺伝子プロモーターは両細胞共に著しい活性化を受けたが、GPx1プロモーターは93A16細胞のみで活性化を受け、93C13細胞は無反応であった。同様の現象はNF-kB結合配列をもつエンハンサー用ベクターを導入し、TNF-α刺激を行った時にも認められた。これらの結果から、93C13細胞ではp53およびNF-kBと協調する因子が不足していることが予測された。そこでGPx1プロモーターの各種欠失変異体を作製してルシフェラーゼアッセイを行ったがルシフェラーゼ活性を低下させる特定の領域は存在しなかった。また93C13細胞における転写活性は常に93A16細胞における転写活性より低く、いずれの欠失変異体でもその比は同じであった。これらの結果から、LECラット肝由来細胞においては、グルタチオンペルオキシダーゼの発現低下は特異的転写因子の差ではなく、基本転写因子を含む転写複合体に異常があるためエンハンサー効果が発揮されないことに因ると考えられた。この基本転写因子の異常がLECラットにおける多彩な異常所見の原因と考えられる。
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