研究課題/領域番号 |
12470053
|
研究機関 | 富山医科薬科大学 |
研究代表者 |
笹原 正清 富山医科薬科大学, 医学部, 教授 (20154015)
|
研究分担者 |
石井 陽子 富山医科薬科大学, 医学部, 助手 (00361949)
尾矢 剛志 富山医科薬科大学, 医学部, 助手 (00343179)
藤森 俊彦 京都大学, 医学研究科, 助手 (80301274)
|
キーワード | 神経 / 発達 / マウス / apoptosis / 再生 / 血小板由来増殖因子 / 受容体 / conditional knockout |
研究概要 |
本研究の目的は、生後の脳発達や高次機能獲得の過程を解明するために、脳の血小板由来増殖因子-β受容体(PDGFR-β)についてCre/lox P systemによるconditional knockout mouseを作製することである。12年度からの継続的な研究プロジェクトでありほぼ予定通り研究が進捗しており、以下その概要を記す。 1)モデル動物の作製:mouse PDGFT-βgenomeにlox P配列をtandemに挿入したfloxed mouse(PDGFR-floxed)ES細胞におけるhomologous recombinationにより樹立し、現在、Black/6系統とのback crossにより行動解析の可能なlineを作製中である。 2)モデル動物の検証:Nestin promoterによりCre recombinase発現を誘導するtransgenic mouseとの交配実験を行った。Cre発現と一致して、海馬を除く大脳から脳幹部の広い範囲における神経細胞でPDGFR-β発現が抑制されているmouseが得られていることを確認した。現在これらの動物に於けるphenotypeを検証中である。これらの事実は、PDGFR-βnull knockoutが生直後に致死となる問題を打開し、我々のモデルがPDGFR-βの機能を解析するための有用なモデルであることを示すものである。 3)細胞シグナル伝達の検証:Cre recombinaseを組み込んだadenovirusによるin vitro transfectionにより、分離培養したPDGFR-floxedに由来する線維芽細胞のPDGFR-β発現を抑制し、受容体下流におけるシグナル伝達の変化、細胞の増殖遊走あるいはapoptosisを観察している。PDGF-α・β受容体、各々のシグナル伝達経路の差異および細胞現象との関連を検討している(論文作製中)。神経組織におけるPDGFR-β機能解析の為のpilot studyと位置づけながら研究を進めている。 4)その他:antisense oligonucleotideによるPDGF-B鎖発現の抑制あるいはPDGF-B蛋白投与を行うことにより生後脳におけるPDGF signalがNMDA受容体を介する神経損傷の保護に重要であることを示した。また、ZFH転写因子の脳における発現を調べ、脳発達の基礎研究を行った。 以上、元来のPDGFR-β knockout modelが持つ致死性を回避し、生後脳におけるPDGFR-β機能を解析することができる新しい遺伝子改変モデル動物の確立と、脳におけるPDGF-B鎖の新たな機能解明に至る研究を行った。
|