研究概要 |
BALBマウスはウレタン誘発肺発癌に比較的耐性を示し、最も高感受性であるA/Jマウスに比べ、その感受性は約14分の1である。我々は、BALBマウスが18番染色体の遠位部にA/Jの発癌感受性を優性に抑制する遺伝子であるPar2を有することを初めて示した。我々の最終目標はPar2遺伝子のpositional cloningである。 昨年度、マウスのウレタン誘発肺発癌耐性遺伝子であるPar2を18番染色体上の約0.5cMの領域に高精度マッピングした。本年度はこの位置情報に従い、同領域に既にマップされているがん抑制遺伝子Dcc(Deleted in colorectal cancer)を含むがん関連遺伝子を,Par2の候補遺伝子としてリストアップし、肺由来cDNAの塩基配列を決定した。BALB, C57BL/6, A/J, C3H/Hcの4系統で配列を比較したところ、Dccに有意な多型は見出せなかったが、複数のSNPs(single nucleotide polymorphisms)を示す遺伝子(仮にXとする)を発見した。比較した4系統では唯一BALBのみがPar2の耐性alleleを有するが、SNPsおよびその結果としてのアミノ酸変異の観点から、XのBALB alleleは他の3系統のallelcと大きく異なっていた。 Par2の位置が0.5cMの領域にまで狭められていることを考えると、X遺伝子がPar2そのものである可能性は高いと考えられる。X遺伝予は比較的最近単離されたがん関連遺伝子であり、その機能については未だ不明な点が多い。よって、今後Xの機能と多型との関係につき、さらに解析を加える必要がある。最終的にX遺伝子がPar2であることを証明するためには、Xのノックアウトないしトランスジェニックマウスを作製し、その肺発癌感受性への影響を調べることになる。
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