BALBマウスのウレタン誘発肺発癌耐性遺伝子であるPar2は、第18染色体遠位部に存在する。Par2をポジショナルクローニングするためには、C57BL/6マウスの第18染色体Par2領域をBALBマウスの同領域に移入したPar2-congenicマウスを利用し、同遺伝子の高精度染色体マッピングを行う必要がある。 慣習的には、10回の戻し交配をもってcongenicマウスの樹立が完了したものと判断される。しかし、我々は予備実験により、Par2の高精度染色体マッピングを目的とする場合、4回の戻し交配を終了した段階の不完全なcongenicマウスでも充分実用に足りることを明らかにした。よって、平成12-13年度にかけて、6回ないし7回の戻し交配を終えたsemi-6ongenicマウスを利用し、Par2の高精度染色体マッピングを試みた。その結果、Par2はD18Mit103遺伝子座とD18Mit188遺伝子座に挟まれる約0.5cMの領域に存在することが明らかになった。今後は同領域に含まれる候補遺伝子を精査し、Par2遺伝子の単離を進める。 一方、Par2-congenicマウスの樹立も9回の戻し交配により既に完了した。樹立されたcongenicマウスの肺発癌過程を親系統であるBALBマウスと比較することにより、Par2遺伝子単独の生物学的機能を解析することができる。特に、二段階発癌説に基づいたイニシエーション相、プロモーション相におけるPar2遺伝子の作用を組織、個体のレベルで明らかにする目的にcongenicマウスを役立てて行く。
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