研究概要 |
各種グラム陽性球菌が産生するコレステロール依存性膜傷害性タンパク毒素(CDC)が示す、膜傷害活性とサイトカイン誘導活性につき、各種リコンビナントタンパクを作製し、その分子機構を解析した。 L.monocytogenes, L. seeligeri, S. pneumoniaeがそれぞれ産生するLLO, LSO, PLYには、何れもドメイン4が必須の膜傷害活性と、ドメイン4非依存的なサイトカイン誘導活性がみられた。LLOによるサイトカイン誘導は、まずマクロファージを刺激してIL-12, IL-18の産生が誘導され、これらが共同してNK細胞を活性化しγインターフェロン産生に至ることがノックアウトマウス細胞などを用いて確認された。NF-kBのレポーターを強制発現させた細胞を用いて、全長LLOのみならずドメイン1-3のみのLLO標品にも、NF-kB活性化能の存在が示された。マクロファージにサイトカイン応答を引き起こすレセプターとしては、各種ノックアウトマウス由来細胞における実験から、TLR2/TLR4/CD14の関与が示唆され、TLRおよび関連分子の強制発現細胞を用いた実験でもこれを支持する結果が得られた。サイトカイン誘導活性は各種CDCファミリータンパクに普遍的なものと当初予想されたが、LLOやLSOと相同性の高いILO(L. ivanovii由来)には膜傷害活性はみられたもののサイトカイン誘導活性がみられなかった。類縁タンパクであるLLO, LSO, ILOのアミノ酸配列を詳細に検討した結果、ドメイン1のN末端側の疎水性およびPEST配列がサイトカイン誘導活性の有無に関与する可能性が示唆された。そこで多くのアミノ酸変異タンパクを作製した結果、疎水性ではなく、PEST配列が活性発現(細胞による認識)に重要であることが示唆された。この成果は極めて興味深いが、さらにPEST配列を変えた標品で確認中である。
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