異物薬物排出ポンプの構造機能と多剤耐性

2000 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 12470066
• 研究機関: 東海大学
• 研究代表者: 中江 太治 東海大学, 医学部, 教授 (50102851)
• 研究分担者: 米山 裕 東海大学, 医学部, 講師 (10220774) ; 良原 栄策 東海大学, 医学部, 助教授 (70167063)
• キーワード: 排出ポンプ / RND / 緑膿菌 / 院内感染 / 薬剤耐性 / トポロジー / 膜蛋白質 / 多剤耐性

研究概要

院内感染多剤耐性菌として問題を残している緑膿菌は、薬物及び異物排出ポンプを発現することによって多剤耐性を示す。本研究では、中でも最も重要な役割を果たすMexABMポンプサブユニットの膜上トポロジーと二次元構造の解析を行った。ポンプの本体をなすと考えられるMexBサブユニットについては、内膜を12回貫通するポリトピック型排出ポンプであることをすでに明らかとして来た。内膜に結合したMexAは、そのシグナル配列の中に脂肪酸修飾配列に共通に見られるLSGCを有する。そこで〔^3H〕-パルミテン酸存在下に生育した菌のMexAを調べてみると、脂肪酸による修飾が見られたことからMexAはリポ蛋白であることが明らかとなった。次に、MexAの脂肪酸修飾部位と考えられるN-末端のシステイン残基をフェニルアラニンもしくはトリプトファンに置換したところ、これらの変異体はペリプラズム可溶性蛋白となった。従ってMexAは脂質によって内膜に結合し、蛋白部分はペリプラズムに存在していた。次にOprMに関しても同様の実験を行ったところ、OprMもまたリポ蛋白であることが明らかとなった。そこでOprMのシグナル配列をペリプラズム蛋白の一つであるAzurinのシグナル配列と置換した。その結果、OprMはペリプラズム可溶性蛋白となった。またOprMのシグナル配列を、内膜貫通蛋白の一つであるMexFの第一膜貫通ドメインと置換した。その結果OprMは内膜貫通蛋白となったが、この雑種蛋白はポンプサブユニットとして正常に機能した。これらの結果から、OprMは主としてペリプラズムに突出した外膜リポ蛋白であることが明らかとなった。以上述べてきたように緑膿菌排出ポンプMexABMのサブユニットトポロジー構造の全ては当研究室で明らかとすることができた。

研究成果

• [文献書誌] Yoneyama,H.,: "Function of the membrane fusion protein, MexA, of the MexA, B-OprM effflux pump in Pseudomonas aeruginosa without an anchoring membrane."J.Biol.Chem.. 275. 4628-463 (2000)
• [文献書誌] Maseda,H.,: "Assignment of the substrate-selective subunits of the MexEF-OprN multidrug efflux pump of Pseudomonas aeruginosa."Antimicrob.Agents Chemother.. 44. 658-664 (2000)
• [文献書誌] Nakajima,A.,: "Localization of the outer membrane subunit OprM of resistance-nodulation-cell division family multicomponent efflux pump in Pseudomonas aeruginosa"J.Biol.Chem.,. 275. 30064-30068 (2000)
• [文献書誌] Maseda,H.,: "Variation of the mexT gene, a regulator of the MexEF-OprN efflux pump expression in wild-type strains of Pseudomonas aeruginosa"FEMS Microbiol.Letts.. 192. 107-112 (2000)
• [文献書誌] Nakae,T.,: "Effect of sulbactam on anti-pseudomonal activity of beta-lactam antibiotics in cells producing various levels of the MexAB-OprM efflux pump and beta-lactamase."Microbiol.Immunol.. 44. 997-1001 (2000)