研究概要 |
院内感染の主要な起因菌である緑膿菌は複数の抗生物質に対し耐性を示す。その主たる原因はこの菌がMexAB-OprMなどの抗生物質排出蛋白を発現することにある。この問題を解決に向けた年度内の研究から得られた成果は主として次のような事柄である。1、MexAB-OprMポンプのMexA及びOprMサブユニットの膜トポロジーを決定する実験を行った。その結果、MexAは内膜に結合したリポプロテインで蛋白部分はペリプラズムに露出しているという結果を得た,またOprMは外膜に脂肪酸で結合し,蛋白部分はペリプラズムに露出しているものと結論した。2、MexBサブユニットの膜貫通領域(TMS)に存在する荷電を有するアミノ酸の役割を場所特異的変異を挿入することによって解析した。その結果TMS-4のAsp407,Asp408とTMS-10のLys939の間でイオン結合をし、一方のAspにプロトンが結合してエネルギー変換をしているものと解釈できた。3、MexAB-OprMの発現制御を調べるために,制御因子であるMexRとMexOP-DNAの結合実験を行った。その結果MexRはmexRとmexAの間のMexR寄りに結合しmexRとmexAB-oprMの転写を同時に制御していることが明らかとなった。4、MexEF-OprNポンプの集合体形成の機序を解析した。その結果、トランスポート機能を有したMexFが存在することによってMexEの部分分解が起きその部分分解が起きたMexEの存在下においてOprNがアッセンブルされることが明らかとなった。5、MexB/MexYトランスポーターの基質認識部位を決定する実験をこれらの蛋白のドメインを交換することによって行った。その結果これらのトランスポーターは内膜からペリプラズムに突出した大きなドメインで基質認識をしておりTMS領域は直接関係がないという結果を得た。これによって今まで知られていない新しい能動輸送のモデルが構築できた。
|