研究概要 |
パラミクソウイルスのセンダイウイルス(SeV)は、マウスを自然宿主とするマイナス鎖RNA肺炎ウイルスである。本研究は、(1)強毒野生型SeVのニワトリ受精卵継代による弱毒化の機構、及び(2)SeVアクセサリー遺伝子産物V蛋白の機能として想定されているマウスの免疫修飾能を検討することにより、宿主因子によるSeVの遺伝子発現と病原性の制御を明らかにすることを目的としている。 (1)(1)強毒新鮮SeV浜松株の卵継代により得た種々の弱毒ウイルスクローンは、マウス病原性低下に対応して初代マウス肺上皮(MPE)細胞における増殖能が低下した。この増殖性の低下は弱毒クローンのゲノム複製不全が原因であった。初代ニワトリ胎児細胞では浜松株、弱毒クローンともほぼ同等によく増殖したことから、強毒野生型SeVの卵継代による弱毒化は宿主依存性のウイルスゲノム複製不全により起こることが明らかとなった。同時にウイルスゲノム複製に関わる宿主因子の存在が示唆された(Arch.Virol.,2001,in press)。(2)弱毒化をもたらす遺伝子変異を同定するために、浜松株ゲノムの全塩基配列を決定した(Virus Genes,2001)。(3)さらに、代表的弱毒SeVクローンの全塩基配列を決定して浜松株の塩基配列と比較したところ、プロモーターの存在するリーダー部位とRNA合成酵素L遺伝子に弱毒化と関連すると推定される変異が検出された(投稿準備中)。(4)今後は浜松株cDNAからのウイルス回収系を確立してそれぞれの変異の弱毒化における意義を明らかにする。(2) SeVV蛋白C端側のCysに富むZnフィンガーモチーフ様構造がマウスの初期免疫応答を修飾とすると推定されている。各Cysを変異させたV蛋白および変異V蛋白を発現するSeVを回収系により作成して、V蛋白が実際にZn結合能を持つこと、そのZn結合能はウイルス病原性発現に関与していることを明らかにした(J.Virol.,2000)。今後V蛋白の初期免疫修飾能の検討を行う。
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