研究概要 |
本研究はEBVゲノム複製機構とそれをサポートする宿主機能の役割の解明のため以下の3つの観点((1)潜伏感染EBVゲノム複製機構(2)溶解感染EBVゲノム複製機構(3)潜伏感染からの再活性化の機構解明)から研究を推進することを目標とし、以下の成果を得た。 1)潜伏感染EBVゲノム複製機構:細胞透過性化学架橋剤DSPによる解析法を確立し、それを用いてORC1/CDC6の核マトリックス結合をより確かに示した。また、ORC1はS期において」proteasomeにおいて分解されることを明らかにした。これも再複製の抑制に寄与していると考えられる。ORC2に関しては、核結合型の約半数がDNaseで可溶化されたものの、残りはORC1同様核マトリックスに結合していることがわかった(J.Biol.Chem.277:10354-10361 2002)。以一方、MCMはより広範囲のクロマチンに分布していた。 2)溶解感染EBVゲノム複製機構:BALF5蛋白質はポリメラーゼcatalytic蛋白質であるが、自身のポリメラーゼprocessivityは低い。反応系にBMRF1蛋白質を添加するとBALF5蛋白質は非常に高いprocessivityを持つ酵素に変換する。ウイルス産生を誘導したB95-8細胞、および組み換えバキュロウイルス感染昆虫細胞の抽出液をショ糖密度勾配遠心法で解析したところ、両蛋白質は生理的条件下においてheterodimerを形成することが明らかとなった。この複合体形成は400mM NaCl存在下ではdisruptされる。また一部はheterodimer二つから成るdimericunitsを形成していることが示唆された。EBV複製フォークではこの複合体がcoordinateしながら両鎖合成を行なっていると考えられる〔投稿準備中〕。 3)潜伏感染からの再活性化の機構解明:EBV潜伏感染細胞において、EBV Lytic cycleへの移行後ウイルスゲノム複製がどのような細胞周期環境下でおこり、また宿主DNA複製がどのように制御されるのかを知るために、我々は、細胞に余分な刺激を与えることなく、EBV lytic cycleを誘導できるtet-on細胞株を樹立し、lytic cycleと宿主細胞周期との相互関係を検討した。この細胞株はlytic cycleを誘導すると細胞増殖停止が観察された。Lytic cycleを誘導した細胞のほとんどがG1/early S期で停止していた。BrdUの取り込みを解析したところ、ウイルスDNA合成は2N DNA contentをもつ細胞で顕著に起こり、宿主DNA合成の抑制が観察された。lytic cycleへの移行前後で細胞周期停止に関与する因子であるp53,CDK inhibitorであるp21,p27の量的変動は無く、cyclinA, cyclinEといったS期進行に関与する蛋白質の発現増加が観察され、Rbのリン酸化型の蓄積が認められた。またlytic cycleにおいてRbをリン酸化しているのは主にCDK2であることが示された。EBV潜伏感染Bリンパ球における再活性化は、G1/S期境界を越えたS期CDK活性の高い状況下において起こることが示唆された(Kudoh et al.J.Virol.77:851-861.2003)。
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