本研究で、神経系の調節に重要な因子が免疫バランスの制御にも重要であることを示唆する知見を得ることができた。すなわち、ovalbumin(OVA)特異的DO11.10マウスのnaive T cellからOVA特異的なTh1細胞とTh2細胞を誘導し、それらにおける神経ペプチド、神経栄養因子、あるいは神経栄養因子に対するレセプターの発現を調べたところ、ナイーブTh細胞には存在しないpreproenkephalin(PPE)、NGFおよびそのレセプターであるTrkA、さらに、NT-3のレセプターであるTrKCがTh2細胞特異的に発現していることが見いだされた。これらの分子はTh1細胞には発現せず、ナイーブThからIL-4依存的にTh2細胞にのみ誘導された。また、免疫系と内分泌系のクロストークについて検討を加えた結果、免疫担当細胞あるいはストロマ細胞との相互作用によって免疫システムにおいて産生される免疫ホルモンが存在し、免疫バランスの調節に関与していることを以下の研究によって初めて明確にした。すなわち、Th2細胞にのみP450sccが存在し、22R-hydroxycholesterolを加えて18hr後の細胞上清中にはpregnenoloneへの代謝が認められた。このpregnenoloneは繊維芽細胞などによりprogesteroneに代謝された。さらに、progesteroneによりTh2免疫の活性化が起こることが示された。以上のことから、Th2細胞自身およびストロマ細胞との相互作用により産生される免疫ステロイドが、Th1/Th2バランスを制御していることが初めて示された。
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