我々が同定単離したIL-2受容体γ鎖は、IL-2をはじめとする複数のサイトカインの共通受容体サブユニットであり、重症複合免疫不全症(SCID)の50%以上を占めるX連鎖SCIDの原因遺伝子である。γ鎖にはキナーゼドメインがなく、細胞へのシグナル伝達はγ鎖に会合するJak3チロシシキナーゼによって伝達されているが、このJak3の変異によってもSCIDが発現する。従って、γ鎖、Jak3シグナル伝達経路に関わる分子の中にはさらに新たなSCIDの原因遺伝子が存在する可能性が考えられる。本研究では、γc鎖/Jak3シグナル伝達経に関与すると考えられる複数の新規分子を単離し、解析を行った。先ず、Jak3ならびにJak2によってチロシンリン酸化される分子、STAM1ならびにSTAM2のin vitroもしくはin vivo機能を解析した。STAM1 KOマウスは、海馬領域にのみ明らかな異常が認められた。一方、STAM2 KOマウスには何ら異常が認められない。in vitro実験において、STAM1とSTAM2はほぼ同等の機能を持つことが示唆されたことより、STAM1とSTAM2はお互いに機能を代償している可能性が考えられた。そこで、STAM1とSTAM2のダブル欠損マウスを作出した。しかし、このダブル欠損マウスは胎生致死となり、解析を進めることが困難となった。この点を解決するため、conditional targeting法によるダブル欠損マウスの作製を試み、作出することができた。このことによりSTAMの機能解析のための基盤が整った。
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