重症複合免疫不全症(SCID)は細胞性免疫と液性免疫がともに欠失する重篤な免疫不全症である。我々が単離したサイトカイン共通受容体γc鎖はSCIDの50%以上を占めるX連鎖SCIDの原因遺伝子である。γc鎖に会合し細胞内シグナル伝達に関わるJak3チロシンキナーゼの変異によってもSCIDが発現することから、γc鎖/Jak3シグナル伝達経路に関わる分子の中にはさらに新たなSCIDの原因遺伝子が存在する可能性が考えられる。そこで我々はJak3キナーゼによりチロシンリン酸化される分子としてSTAMならびにHgsを含む複数の分子を同定単離した。本研究では、サイトカインシグナル伝達経路における、STAM1、STAM2、Hgs、AMSHおよびGraf40の機能を解析するため各々遺伝子欠損マウスならびに遺伝子導入マウスを作出した。2つのSTAM分子が欠失したダブルノックアウトマウスは胎生致死となったことから、リンパ球におけるSTAM分子の機能を解析するために、リンパ球のみで2つのSTAM分子が欠失したダブルノックアウトマウスを作製した。Hgs遺伝子欠損マウスではTGF-βファミリーに属するサイトカインのシグナル伝達の阻害が認められた。AMSH遺伝子欠損マウスは生後19〜23日までに死滅し、生後16日目の病理組織像では海馬に異常が認められた。Graf40の変異遺伝子導入マウスは胸腺細胞数が著減し、T細胞分化がpreT細胞の段階で停止していた。
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