抗体の適応的進化は、体細胞突然変異の発現と変異体の抗原による選択の過程からなっている。これらの過程は、免疫二次器官の胚中心で進行するが、そのメカニズムに関しては不明な点が多い。本年度は、抗原による変異体の選択が、どのような基準のもとになされるかを調べた。(4-hydroxy-3-nitrophenyk)acetyl(NP)-CGGでマウスを免疫後9週に脾臓よい、抗NP抗体産生ハイブリドーマを作成した。抗体をコードする遺伝子の塩基配列の解析から、得られたハイブリドーマの中に同一の親クローンに由来する4つのクローンが存在し、これらは1つの系統樹で関連づけられ進化の途上にあることがわかった。これらの抗体とハプテンとの相互作用の速度論的および熱力学的パラメーターを測定することにより、抗体の進化がどのような原則に基づいてなされているかを調べた。BIAcoreで調べたハプテンと抗体の結合速度および解離速度は体細胞突然変異の導入度とともに減少することがわかった。一方、ITCによる結合による熱測定では、エンタルピー変化は、それぞれの抗体間でほとんど差がなく、主として、エントロピー変化により自由エネルギーの変化が説明できることがわかった。これらのパラメーターの変化は、ハプテンと抗体との相互作用の様式が、induced-fit型からlock and key型に転換していることを示唆している。
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