仮説「前思春期の牛乳飲用によって生殖能力(妊孕力)が低下する」の検証

2000 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 12470083
• 研究機関: 山梨医科大学
• 研究代表者: 佐藤 章夫 山梨医科大学, 医学部, 教授 (40020747)
• 研究分担者: 大村 実 九州大学, 医学部, 助手 (50243936) ; 武田 正之 山梨医科大学, 医学部, 教授 (80197318) ; 星 和彦 山梨医科大学, 医学部, 教授 (20111289)
• キーワード: 牛乳 / エストロゲン / 生殖毒性 / 生殖能力 / 繁殖試験

研究概要

1 牛乳中のestrogensの測定
使用する牛乳中のestradiol-17b、estriol、estroneをクーロアレイ検出器付HPLCで測定する方法を完成した。市販のホルスタイン乳とジャージー乳(いずれも成分無調整)のエストロゲン濃度を測定した。牛乳には抱合型(Total-Free)が主要エストロゲンとして存在する。特にestroneの90.0%(ホルスタイン)、93.4%(ジャージー)は抱合型であった。抱合型エストロンは経口的生理活性が高い。1日の牛乳摂取量を300mlとすると、日本人は1日にほぼ100ngの抱合型エストロンを摂取していることになる。
2 生殖実験の準備
海外を含め4名の研究者を招き生殖毒性に関わる実験手技を指導していただいた。さらに、共同研究者および研究補助者を2回にわたって残留農薬研究所に派遣して、実験手技のマスターに努めた。その結果、精子数、精子形態異常、精子運動能、性周期測定などの実験手技に習熟した。
3 2世代生殖実験
1)牛乳を小動物に与えるのは困難で特別の工夫を必要とする。グルテン(リジン、バリン、スレオニン、メチオニン添加)、ココナッツオイル、乳糖を主成分とする牛乳と等カロリーの人工乳を作った。粉末飼料と牛乳(あるいは人工乳)を3:4(重量比)とする特別食を作りラットに与えることにした。この飼料によってラットは粉末飼料を15g、牛乳(あるいは人工乳)を20g摂取することになる。
2)平成13年3月9日に4週齢のラット(Wistar Hannover Galas)を搬入し、1週間の馴化飼育ののち、上記特別飼料で飼育を開始した。最初の交配は4月26日からの4日間を予定している。

研究成果

• [文献書誌] 王培玉,王原,大村実,金子誉,佐藤章夫: "前思春期の牛乳飲用によってヒトの生殖能力が低下するか?"日本衛生学雑誌. 55巻1号. 400 (2000)
• [文献書誌] 秦立強,金子誉,王培玉,ガンマ・ダバサンブ,佐藤章夫: "HPLCによる牛乳中エストロゲンの測定"日本衛生学雑誌. 56巻1号(in press). (2001)
• [文献書誌] ガンマ・ダバサンブ,秦立強,王培玉,佐藤章夫: "精巣がんと前立腺がんの記述疫学"日本衛生学雑誌. 56巻1号(in press). (2001)
• [文献書誌] 佐藤章夫,ガンマ・ダバサンブ,秦立強,王培玉: "世界42カ国の食品消費量と精巣および前立腺悪性腫瘍の発生率"日本衛生学雑誌. 56巻1号(in press). (2001)
• [文献書誌] D.Ganmaa,P.Y.Wang,Q.Qin,K.Hoshi,A.Sato: "Is milk responsible for male reproductive disorders?"Medical Hypothesis. 26巻(in press). (2001)