研究概要 |
1.バイオロジカル・モニタリングの研究 i)患者の尿検体が被曝から約3週間に渡って採取したものが保存してあるのでそれについてサリン及びその合成時の副生成物の代謝物を測定して被曝の実態を解明した。多数の副生成物に被曝されていると思われる(Hui and Minami,Clin.Chim.Acta 2000;302:171-188.)。 ii)サリンの安定化剤としてジエチル・アニリンもサリンを入れた袋の中に入っていたという事が報道から判明したが、これが人体内に吸収されているか否かを検討しなければならない。何故なら既に我々が報告したように被曝者に遺伝毒性を示唆する変化が、認められたが、これはジエチル・アニリンの被曝によるのか、サリン合成時の副生成物のDIMPなどに依るのか判然としないからである。しかしジエチル・アニリンがどの様なものに人体内で代謝されるかも解っていないので、その主な代謝経路を先ず動物実験であきらかにしたいと考える(現在進行中)。 2.サリンの副生成物によるSCE頻度上昇のメカニスムの研究(李、稲垣) i)サリン被曝後年余を経ているが被曝者にまだSCEが認められるか否かを約50名の被曝者と約50名の対象者に付いて検索中である。 ii)ジエチル・アニリンのin vitroでのSCEの頻度の上昇の誘導は既に報告した。これがin vitroでも起るか否かを動物実験的に検索しつつある。。 iii)SCEの頻度を増加させるジエチル・アニリン代謝物質の同定、これまでにin vitroの実験においてジエチル・アニリンにS9ミックスを加えると加えない場合に比べてSCEの頻度が約5倍に増加した。これはS9ミックスによるジエチル・アニリンの代謝が起こりその代謝物がSCEの頻度を増加させたと考えられる。この代謝物をHPLCやそれに付属するダイオード・アレー分光光度計を用いて確定したいと考える。
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