研究概要 |
環境発がんにおけるメタロチオネインの役割を明らかにする目的で、メタロチオネイン-I/II欠損マウスを用いて、7,12-dimethylbenz[a]anthracene(DMBA)/12-O-tetradecanoylphorbol-13-actatae(TPA)二段階皮膚発がん、DMBA単独経口投与による多臓器発がんおよびN-ethyl-N-nitrosourea(ENU)による次世代肺発がんに対するメタロチオネインの効果を検討した。また、化学発がん物質や放射線による発がん過程のイニシエーションやプロモーションへのメタロチオネインの関与を明確にする目的で、DMBA/TPA併用、benzo[a]pyren(B[a]P)および放射線による遺伝子損傷に対するメタロチオネインの効果を検討した。 その結果、メタロチオネイン-I/II欠損マウスは、野生型マウスに比べてDMBA/TPA併用による皮膚での腫瘍の発生、DMBA単独経口投与による胃・肝および肺での腫瘍の発生並びにENUを妊娠16日目に投与して出生した子マウスの肺での腫瘍の発生に対して感受性が高いことが明らかとなった。また、メタロチオネインは、DMBAによる皮膚での遺伝子損傷、B[a]Pによる染色体異常および放射線による染色体異常や酸化的DNA損傷に対して防御効果を示すことが見いだされた。さらに、DMBA/TPA併用において、イニシエーションおよびプロモーションの発がん過程にメタロチオネインが深く関与することも明らかとなった。 本研究結果より、メタロチオネインは、化学発がん抑制因子として重要な役割を果たしており、環境発がん感受性要因としてのメタロチオネインの重要性が明らかとなった。
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