研究概要 |
我が国で循環器疾患の疫学研究を長期にわたり実施している4地域集団において、これまでに統一した方法で頚動脈超音波検査を実施した4,593人の中高年男女を対象に、2〜5年後の頚動脈超音波検査を再度施行することにより、この間の頚動脈硬化の進展度を評価する。そして、動脈硬化の進展を左右する主な環境要因、遺伝的要因の同定を行う。さらに循環器疾患発症を予知する上で頚動脈硬化の有用性について、コホート分析を行う。 対象集団は東北農村(人口7千人)、大阪近郊(人口2.3万人)、関東農村(人口1.7万人)の60〜74歳男女住民と大阪府吹田市(人口33万人)の40〜74歳男女住民である。1996年〜1999年にかけて、頚動脈超音波検査を東北農村で327人(60〜74歳)、大阪近郊で443人(60〜74歳)、関東農村で523人(60〜74歳)、大阪府吹田市で3,300人(40〜59歳:1,700人、60〜74歳:1,600人)に実施した。この4,593人のうち、1,500人について2〜5年後の時点で再測定を行った。 頚動脈硬化進展と関連の強い因子として、高血圧、高コレステロール血症、糖尿病が確かめられた。特に、高血圧と高コレステロール血症の持続期間が長いことが頚動脈硬化の進展と関与していた。また、男子においては炎症マーカーである血漿フィブリノーゲンや白血球、Tリンパ球の高値が頚動脈硬化の有意な関連要因として示された。血漿ホモシステインの高値と頚動脈硬化との関連、さらにアンジオテンシン変換酵素の遺伝子多型と頚動脈硬化との関連は弱いながらも認められた。 上記の対象者を追跡調査し、発症した脳卒中、虚血性心疾患(心筋梗塞、労作性狭心症、1時間以内の急性心臓死)と頚動脈硬化との関連を分析したところ、総頚動脈の内膜・中膜複合体(IMT)の肥厚と脳梗塞との発症の間に関連が認められた。
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