研究概要 |
我が国で循環器疾患の疫学研究を長期にわたり実施している4地域集団において、これまでに統一した方法で頚動脈超音波検査を5,269人の中高年男女を対象に実施し、またそのうち1,761人の対象者に対して2〜5年後の頚動脈超音波検査を再度施行することにより、この間の頚動脈硬化の進展度を評価する。そして、動脈硬化の進展を左右する主な環境要因、遺伝的要因の同定を行う。さらに循環器疾患発症を予知する上で頚動脈硬化の有用性についてコホート分析を行う。 対象集団は東北農村(人口7千人)、大阪近郊(人口2.3万人)、関東農村(人口1.7万人)の60〜74歳男女住民と大阪府吹田市(人口33万人)の40〜89歳男女住民である。頚動脈超音波検査を東北農村で234人(60〜74歳)、大阪近郊で443人(60〜74歳)、関東農村で506人(60〜74歳)、大阪府吹田市で3,998人に達した。 頚動脈硬化進展と関連の強い因子として、高血圧、高コレステロール血症、糖尿病が確かめられた。頚動脈硬化の進展とは加齢が強く関与していた。また、男子においては炎症マーカーである高感度C反応蛋白の高値と接着分子であるE-セレクチンが頚動脈硬化の有意な関連要因として示された。アンジオテンシン変換酵素の遺伝子多型と頚動脈硬化との明らかな関連は認められなかった。 上記の対象者を追跡調査し、発症した脳卒中、虚血性心疾患と頚動脈硬化との関連を分析したところ、総頚動脈の内膜・中膜複合体(IMT)の肥厚と全脳卒中との間に関連の傾向がみられた。
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