研究概要 |
本年度は、前年度開発した血中微量ベンゼン測定のためのシリンジヘッドスペース法について、再現精度等について改良を試み、血中微量トルエン、キシレンの測定に応用した。また、現場の曝露モニタリングへの応用について若干検討を行った。 分析方法 血液に等量のベンゼン、トルエン、o-,m-キシレン(各50〜400ppb)、内部標準(トリクロロエチレン600ppb)を含む標準液を添加した健常者血50μlを用い、室温(20-24℃)条件下でガスタイトシリンジ内で気液平衡を行った。これまでのシリンジヘッドスペース法では、シリンジ内に充填したガラスウール層に血液試料を浸透させた状態で気液平衡を行ったが、今回の血液試料は、ガラスウール層に浸透させないで、気相部分シリンジ内側に液滴状に付着させた状態で、気液平衡を行った。分析装置:ポータブルGC(Voyager, Perkin-Eler. co ltd) 結果と考察 シリンジ内の気相濃度は30〜90分の間ほぼ一定であった。気液平衡後の気相濃度のばらつきはCV10%以内と従来法よりも小さく、再現性は良好であった。トリクロロエチレン内部標準法での検量線は、ベンゼン、トルエン、o-,m-キシレン各50〜400ppbでr=0.998以上の良好な直線性を示した。検出下限は血中濃度で、ベンゼン0.1ppb、トルエン0.2ppb、o-,m-キシレン1ppbであった。今回開発した分析方法を用い、某事業所プラスチックフィルム印刷作業場(気中トルエン濃度6.9〜27.3ppm)従事者17名の血液分析を行ったところ104〜438ppbのトルエンが検出された。また、同時に測定した個人曝露濃度は14.1〜28.1ppmであり、血中トルエン濃度と個人曝露濃度の間にはr=0.7のかなり強い相関関係が認められた。以上の結果より、今回確立した測定方法は、高感度な血中VOC測定法であり、また、簡便性、実用性ともにに優れていると思われた.
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