研究課題/領域番号 |
12470099
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
二塚 信 熊本大学, 医学部, 教授 (80040195)
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研究分担者 |
北野 隆雄 熊本大学, 医学部, 助手 (50214804)
永野 惠 熊本大学, 医学部, 講師 (10136723)
稲岡 司 熊本大学, 医学部, 助教授 (60176386)
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キーワード | 水俣病 / メチル水銀曝露 / 疫学 / 健康被害 / 精神不安 / 因子分析 / 共分散構造分析 |
研究概要 |
私共は水俣市に隣接するT町においてメチル水銀汚染地域住民(水俣病認定患者を含む)の後影響について継続して調査研究を行っている。従来の研究で、汚染地域住民は非汚染地域住民に比べて多様な愁訴を高頻度に有していることを明らかにした。本研究では、これらの愁訴や受療行動と精神不安との係わり、また、住民の精神状態を規定している要因として、身体的要因のほか家族構成やソーシャルネットワークなどの社会的要因や水俣病発生による様々な体験などが考えられるのではないかとの仮説のもとに精神不安とその要因に関する調査を実施し、精神不安の構造と性状を明らかにし、精神不安の構造をモデル化することを試みた。調査対象はメチル水銀汚染地域の2つの海浜集落の40歳以上の全住民301名について訪問面接調査を行い、132名より回答が得られた。調査項目は自覚症状(18項目)、受療状況、日常生活動作能力、水俣病問題への係わり、社会的ネットワークの形成状況など約60項目で、精神状態測定の指標として、The General Health Questionnaire (GHQ) 30を用いた。その結果、GHQの得点はきわめて高く、基準点(8点)を回るものが84.8%に達した。GHQ30のプロマックス回転により、抑うつ因子、社会的無能力。不適応感因子、不眠因子、身体症状因子、重圧感因子等が抽出され、他の報告に比し、本事例では、抑うつ因子の寄与率が高いことが特徴的であった。さらに、精神不安の構造について、共分散構造分析を行ったところ適合度の高い(GFI 0.942. AGFI 0.900. RMSEA 0.049)モデルが見出された。すなわち、メチル水銀汚染地域住民の精神不安は、潜在的水俣病体験から精神不安への標準化偏回帰係数は0.17、身体症状からのそれは0.66、顕在的水俣病体験からのそれは-0.45であった。愁訴やADL、受療状況等と精神不安との関連性が高いのは当然であるが、水俣病問題への積極的関与(患者団体所属、認定申請、座り込み等)が住民自身の帰属感、共通体験の仲間との共有を通じてストレス緩和の方向に動くことが注目された。
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