研究課題/領域番号 |
12470100
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研究機関 | 埼玉県立大学 |
研究代表者 |
柳川 洋 埼玉県立大学, 保健医療福祉学部, 教授 (30077169)
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研究分担者 |
大木 いずみ 自治医科大学, 医学部, 助手 (50296092)
中村 好一 自治医科大学, 医学部, 教授 (50217915)
三浦 宜彦 埼玉県立大学, 保健医療福祉学部, 教授 (10143421)
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キーワード | 川崎病 / 疫学 / 心後遺症 / 罹患率 / 予後要因 / ガンマグロブリン治療 |
研究概要 |
1970年以来継続的に川崎病の患者を把握してきた。これまでに把握した患者の疫学特性及び予後要因を明らかにする目的で、以下の研究を実施したので、本年度末現在の中間報告を行う。 1.全国疫学調査による川崎病発生動向と疫学像の解析 (1)川崎病死亡の変遷 1970以来1998年までの間に把握したすべての死亡例449人を対象にして疫学像を明らかにし、川崎病の生命予後の改善に寄与した要因を明確にすることを目的として実施した。死亡例449人の致命率は0.29%、男/女比は1.5であった。年齢別致命率は、1歳未満で高く1歳以上の各年齢群の3.9倍であった。また、γグロブリン治療の普及に伴い、明らかに減少した。性・初診時年齢別の致命率は、男女とも0-2月の若年児が最も高く、1歳を超えるまで月齢が進むにつれて急速に減少していた。γグロブリン治療普及後の致命率は1歳未満で著明に低下し、特に0-2月では普及前に比べて8分の1以下であった。 (2)年齢曲線の解析 川崎病の年齢別罹患率は、通常0歳代の後半にピークを有する一峰性のカーブを示していたが、1997年及び1998年の患者では、両年とも月齢6-8か月にくぼみが見られ、前後の月齢群(3-5か月と9-11か月)よりも有意に低い値であった。罹患率のこのような年齢特性は偶然の誤差によるものではなく、川崎病疫学像に注目すべき変化が生じたと考えられる。今回の解析から、初診時の季節により年齢のピークが6か月間ずれたために二峰性になったことが明らかになった。その原因として、発病の季節により、病原体の性質が異なっていたことが考えられる。 2.川崎病発病後の後遺症合併の危険因子の解明 川崎病の心後遺症の実態と予後に影響を及ぼす要因を明らかにする目的で、急性期に心臓に異常所見がみられた症例1611人のうちγグロブリン投与量が1000mg/kgの者及び2000mg/kgの者について、1か月後の心後遺症を残す危険因子を観察した結果、再発の有無(あり)、好中球(9100/mm3以上)が有意な高危険因子であった。しかし、性(男)、年齢(1歳未満)、ヘマトクリット(32.5%未満の低値)、白血球数(12000/mm3未満の低値)、γグロブリン総投与量、γグロブリン治療開始病日などは1か月後の心後遺症と有意な項目として観察されなかった。
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