研究概要 |
石綿肺を含むじん肺は、粉塵を貪食する肺の第一防御線,肺胞マクロファージが誘導する一酸化窒素合成酵素(NOS)による一酸化窒素(NO)の産生増加と、それに伴う酸化ストレスが重要であると既に公表した。この酸化ストレスは細胞内の主要還元物質,GSHとNOからGS-NOを形成して生ずるGSHの減少によって一層増強すると考えられる。そこで、マウス白血病由来のマクロファージ系細胞株をNOS誘導性サイトカインおよび細菌内毒素の存在下で培養し、GS-NOの生成を調べた。これらの培養でNO産生は著明に増加した。HPLCカラムで分離したGS-NOをHgCl_2と反応させて生ずるNOのGriess反応からGS-NOの定量を試みた。しかし培養液及び培養細胞(RAW246.7)からGS-NOは全く検出できなかった。本法によるGS-NO標準物質の検出限界は1μMであった。そこで、GS-NOを含むRS-NOはHgCl_2との反応でNOを遊離させた。このNOとDAF-2DAまたはH_2DCFDAの反応から生ずる蛍光を利用してRS-NOを測定した。この方法では1μM以下のRS-NOが定量できた。他方、RS-NOを加熱して生じたNO_2^-とNO_3^-に硝酸還元酵素を反応させて、全てNO_2^-化し、このNO_2^-をKIでNO化した。このNOとO_2と反応させて生じたNO_2^*(励起状態)化学発光からRS-NOを定量した。その結果RS-NOは定量可能であると判明した。蛍光法及び化学発光法のいづれでも0.1〜0.01μMレベルのRS-NOの定量ができることを明らかにした。以上から、RS-NOの生成量はこれまで考えていた以上に少ないことも明らかとなった。したがって、NOとGSHの反応でGSHが消費され、酸化ストレスが増強される可能性は乏しいという結果を得た。
|