研究概要 |
石綿などの粉塵吸入による塵肺発症は肺間質及び周囲組織における慢性炎症とそれに伴う線維化の不可逆性進展の結果であると広く認められている。外来性異物の吸入に対する肺の第一防御線は肺胞マクロファージである。このマクロファージは吸入粉塵を貧食し、活性化をうける。その結果、活性酸素であるスーパーオキシドアニオン(O_2^-)を産生する。この活性酸素からH_2O_2やOHラジカルが発生して酸化的ストレスを生じる。さらに、粉塵貧食したマクロファージは一酸化窒素合成酵素(iNOS)を誘導し、多量の活性窒素酸化物(RNS)、とりわけNOを持続的に生成する。これ自身、細胞組織に酸化ストレスを与えることはよく知られている。我々はO_2^-とNOによって、ONOO^-が形成され、それによる還元性物質であるグルタチオンやチオール含有物質をニトロソ化して生ずる酸化的ストレスの増強を明らかにすべく以下の実験を行った。ニトロソチオールをELISA法,UV照射と加熱によるニトロソチオールから遊離するNOを高感度のNO特異的蛍光試薬で測定した。結果、ELISA法,UV照射-加熱-蛍光試薬を用いるいづれの方法によってもニトロソチオール測定が可能であることを見出した。しかし、粉塵刺激を受けたマクロファージの培養系でのニトロソチオール生成量は期待するほどの高濃度ではなく、数百nM〜μMの範囲であることを明らかにした。これとは別に、粉塵曝露によって、マクロファージは炎症性サイトカインを産生することをELISA法で明らかにした。以上より、粉塵曝露によって、肺胞マクロファージは活性酸素,活性窒素酸化物,ニトロソチオール形成による還元性物質の減少,炎症性サイトカイン産生などによる慢性的な酸化ストレスを惹起し、不可逆性な肺線維症の発生に深く関与することを示唆する知見を得た。
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