研究概要 |
1.出血性ショックモデルの作製:雄Wistarラットを用い,ウレタン-クロラロース腹腔内投与麻酔,自発呼吸下で右頚動脈カニューレから脱血した。全血量に対する脱血量(%)の脱血後5時間までのLD50は24%であった。以下の実験では全血量の約17%を20分間で脱血した。 2.病態の観察:(1)頚動脈の血圧,心電図からの脈拍数をポリグラフシステムで脱血後最長5時間まで記録した。また胃直下を切開し空腸表面の血流量をレーザー血流計で測定した。脱血直後に血圧は急激に低下し,その後5時間まで徐々に昇圧した。(2)脱血後1時間,3時間,5時間と非脱血群(各群n=4-5)のCr, BUN, GOT,GPTおよびCPKを測定した。いずれの項目も脱血後有意に増加し,5時間後まで増加した。(3)諸臓器の形態学的変化を光顕で観察した。腎臓;糸球体の毛細血管に炎症性細胞(主に好中球,以下同じ)の浸潤,近位尿細管に硝子滴変性,肝臓;肝細胞の好酸性化と凝固壊死,ジーヌソイド内への炎症性細胞の浸潤,空腸;炎症性細胞の浸潤,粘膜細胞の萎縮と凝固壊死,肺;炎症性細胞の瀰漫性浸潤と一部にうっ血水腫,などが認められた。 3.サイトカイン類の定量:血清TNFαをELISAキットによって測定した。脱血群では非脱血群に比べ脱血1時間後に,高値を示す傾向が認められた(P<0.1,n=4)。3時間以降は両群間に有意な差は認められなかった。 4.サイトカイン類の局在の観察:現在検討中である。 5.腸管の透過性の観察:屠殺1時間前にHRPを空腸へ注入し検討した。脱血群のみに空腸の粘膜固有層および粘膜下組織にHRPの侵入が認められた。 これらの結果から,脱血後に腸管の透過性亢進ならびに腎機能および肝機能の障害が認められ,その原因としてサイトカインの関与が推測された。
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