研究概要 |
前年度と同様に,雄Wistarラットを用い,全血量の約17%を20分間で脱血して出血性ショックモデルとし脱血1,3,5時間後の病態像について,今年度は以下の知見を得た。 1.空腸表面の血流量:レーザー血流計により測定したところ,その量は脱血後急激に減少し,脱血5時間後まで有意な低値が持続した。 2.サイトカイン類の局在:肝臓,腎臓および小腸におけるTNFαの局在を免疫光顕により観察したが,その特定はできなかった。 3.サイトカイン阻害剤による効果 TNFαの産生阻害剤FR167653 (FR) 5mg/kgBWを前投与し,脱血後の下記の指標へのFRの効果を検討した。 (1)脱血後の心拍数および血圧の動態に対しては,FRの特徴的な影響は確認できなかった。 (2)脱血後の血清クレアチニン(Crea),BUNおよびCPKの経時的な上昇が抑制された。 (3)脱血1時間後の血清TNFαの上昇が抑制された。 (4)光顕により形態学的変化において,脱血5時間後の腎臓障害(傷害)の発生が阻止された。 4.一酸化窒素合成酵素(NOS)阻害剤による効果 s-methylisothiouea (MU)およびaminoguanidine(AG)をそれぞれ20mg/kgBW前投与し,脱血5時間後の血清Crea, BUNおよびCPKへの効果を検討した。 (1)AGは脱血後のCreaおよびCPKの上昇を有意に抑制したが,BUNの上昇は抑制しなかった。 (2)MUは脱血後のBUNの上昇を有意に抑制した。 これらの結果から,出血性ショックにおける腎障害発生にTNFαが重要な役割を果たすことが明らかとなった。さらに,出血性ショック時の腎障害と腸管粘膜バリア障害との関連性およびNOの関与も示唆された。
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