HER2蛋白内にマウスMHCクラスII分子I-A^d結合性ペプチドが少なくとも4種類存在することを明らかにした。その内のひとつHER2p16-30ペプチドをMHCクラスI分子結合性ペプチドHER2p63-71と投与することと、ペプチド特異的CD8^+キラーT細胞の活性増強が可能なこと、腫瘍肺転移モデルにおいてHER2p63-71ペプチド単独投与に比してはるかに強い転移抑制を示すことを明らかにした。同様のI-A^d結合性ペプチドOVAp323-339では、特異的CD8^+キラーT細胞の活性増強は得られるものの、in vivoでのHER2^+腫瘍の拒絶能の増強は限られており、腫瘍細胞由来ヘルパーエピトープの重要性が明らかとなった。一方、前述のSEREX同定抗原分子はCD4^+T細胞により認識され、HER2又はmERK2発現用プラスミド及びSEREX抗原分子発現用プラスミド免疫では、HER2又はmERK2遺伝子での単独免疫に比して数倍以上の特異的CD8^+T細胞が誘導された。一方これらSEREX抗原は強い活性のCD4^+CD25^+抑制性T細胞をも誘導する。免疫療法の開発にとっては、腫瘍内抗原分子を認識するCD4^+ヘルパーT細胞の活性を増強し、CD4^+D25^+抑制性T細胞の活性を制御することが極めて重要である。これまでの検討を踏まえ、CD4^+T細胞機能の人為的調節を伴った有効なワクチンをデザインする。
|