1)胆汁酸によるfarnesoid X recetor (FXR)の活性化機構の解明 核移行シグナルはDNA結合部位とリガンド結合部位の間にあるhinge部位に存在すること、C末端側にリガンドである胆汁酸の結合する部位が存在すること、N末端に転写調節部位が存在すること、を明らかにした。また、FXRは胆汁酸非存在下においても核内に存在し、splicing variant formの存在も発見し検討中である。 2)胆汁酸によるNF-κB活性化機構の解明 胆汁酸はNF-κBの抑制分子であるIκBαとIκBβを分解することによってp65とp50のヘテロダイマーが2峰性に活性化させることを明らかにした。さらに、胆汁酸によるNF-κBの活性化における細胞内情報伝達系に、酸化ストレス、MEKK1、p38 MAP kinaseの関与を明らかにした。 3)FXRの標的遺伝子の検索 Bile salt export pump遺伝子、Phospholipid transfer protein遺伝子、Cholesterol 7α-hydroxylase遺伝子、およびDehydroepiandrosterone sulfotransferase遺伝子などを調節していることが明らかとなっている。 4)NF-κB活性化に伴う免疫機能分子に及ぼす胆汁酸の作用の検討 NF-κBのコンポーネントであるp65とFXRが相互作用を有し、ともにそれぞれの固有の標的遺伝子の転写を相乗的に正に調節していることを明らかにした。かかる成績は、腸肝循環とコレステロール代謝のみで作用すると考えられているFXRが炎症や免疫反応に直接関与していることを示唆している。また、胆汁酸によるNF-κBの活性化を介した機能分子発現への作用として、ケモカインRANTESや抗アポトーシス分子IAP-1の発現を転写レベルで正に調節していることを明らかにした。
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