研究概要 |
本研究では、分子生物学的手法を用いて肝臓の病態生理に於ける類洞壁細胞の細胞内相互作用とシグナル伝達機構を明らかにし、類洞壁細胞の機能制御を細胞内のレベルで解明した。特に、肝線維化における肝内細胞間相互作用と細胞内シグナル伝達機構、肝再生に於ける肝類洞内皮細胞の増殖や、肝における癌細胞転移に関連した内皮細胞のangiogenesisの成立機序を解析し、これら病態の制御と治療にかかわる重要な要因を明らかにした。 肝線維化に関与する星細胞に関しては、各種サイトカイン刺激やHBV, HCVによる星細胞内シグナル伝達と、retinolによるcollagen産生抑制におけるRXR/RARの核内receptorとcorepressor、coactivatorを解析した。肝再生に於ける肝類洞内皮細胞の増殖機構の細胞内シグナルの解析においては、VEGF receptor、Ras-MAPKシグナル伝達の系、p38、SAPK/JNKの系、JAK/STATの系、Pl3K-Akt、JAK/STATのシグナル伝達の系を解析した。 遺伝子導入による肝病態の制御機構の解明と肝線維化および分解における細胞内制御機構の解明においては、TGF-b1のプロモーター領域にCAT遺伝子をつないだreporter plasmid pHTD2を用いて解析し、HBx蛋白とHCV core蛋白が用量依存性にTGF-b1 promoterを活性化することを見出した。同時に、tissue inhibitor of metalloproteinase-1、-2(TIMP)の発現に関連する細胞内シグナル伝達系を明かにした。さらに、これら遺伝子発現に際して核内のretinoic acidに対する核内receptorであるRAR, RXRとcorepressor、coactivatorとcollagen gene expressionとの関連を検討した。
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