短鎖脂肪酸、特に酪酸による腸管上皮細胞機能の修飾に関与する分子機構を明らかにするために、本年(平成12年度)は、種々の炎症刺激により腸管上皮に誘導される反応に対する酪酸の効果を検討した。すなわち、IL-1βやTNF-αを腸管上皮細胞HT-29に添加し、誘導されてくるIL-8、MCP-1、RANTESなどのケモカインの産生に対する酪酸の効果を検討した。酪酸は、IL-1βやTNF-αにより誘導されるケモカインの産生を強力に抑制した。また、その効果発現は転写因子NF-κBの活性化の抑制を介するものであった。そので、ヒトIL-8のプロモーター領域をcloningしてルシフェラーゼvectorに挿入し、そのIL-8プロモーター活性にたいする効果を検討した。酪酸は、IL-1βやTNF-αにより誘導されるIL-8のプロモーター活性を強力に抑制していた。特に、この活性は、NF-κBの結合部位のdeletionにより失われることから、これらは酪酸はNF-κBの活性化を抑制し、これらがIL-8プロモーターの活性化の抑制を誘導し、transcriptionレベルでの効果を発現していることが明らかになった。これらの効果について、酪酸によるヒストン蛋白のアセチル化の関与の可能性について、今後、ヒストン脱アセチル化酵素の阻害により強力にヒストン蛋白のアセチル化を誘導するトリコスタチンAを用いて同様の検討を加える予定である。
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