研究概要 |
これまで,単離したヒト腸上皮細胞や大腸癌由来のHT-29などの細胞を用いて短鎖脂肪酸特に酪酸がさまざまの刺激により誘導される転写因子の活性化を抑制していることが明らかになった.つまり,TNF-αの炎症性サイトカインにより誘導されるNF-KBの活性化は酪酸により抑制される.一方基本転写に係るSp-1には影響しない.さらにAP-1は抑制される,酪酸は炎症刺激により誘導される転写因子の活性化を抑制し,その下流のIL-8の産生を抑制していた.酪酸の誘導はこれらの結果より抗炎症作用として発揮されると考えられる.ところで酪酸などの短鎖脂肪酸は食物線維の腸内発酵により誘導されるが,食物線維を食品と考えてプレバイオティクス効果による炎症性腸疾患の治療を試みた.発芽大毒由来の線維であるGBFをヒトに投与すると便中の酪酸濃度が優意に上昇した.さらにGBFは軽症〜中等度の潰癌性大腸炎に治癒効果をもたらした.以上の結果をさらに追求すべく,現在全国規模での効果確認のトライアルを実施中である.
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