原発性胆汁性肝硬変(以下PBC)は臓器特異的な自己免疫性疾患と推察されているが、胆管細胞における標的抗原が不明である。本研究では、最近開発されたレーザーマイクロダイセクションにより、顕微鏡下に特定の細胞を同定しその細胞のみを集め、さらにmicroarrayを用いて正常な胆管細胞における遺伝子発現と比較することにより、病因遺伝子を探すことを試みた。 基礎的検討から、レーザーマイクロダイセクションにより胆管上皮細胞を選択的に採取し、メッセージ発現の検討が可能であった。さらに少量のmRNAをT7 RNAポリメラーゼを用いることで線形増幅し、DNA microarrayによる検討が可能であった。 正常、C型慢性肝炎およびPBC症例の生検肝組織より胆管細胞を収集し、各疾患における胆管上皮細胞での遺伝子発現を比較検討した。PBCより採取した胆管上皮細胞において正常胆管細胞に比べ特定の遺伝子群の発現に差異があることが認められた。これらの遺伝子の一部はC型慢性肝炎の胆管細胞においても発現が増強されており、炎症に伴い増幅されているものと考えられた。また胆汁うっ滞と関連する遺伝子も増幅されていた。現在、PBCの病因と関わる遺伝子を解析中である。
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