1.目的 本研究は、GST-πの活性を特異的に阻害するグルタチオンアナログ(以下GA)を合成し、ラット大腸発癌モデルを用いて予防効果を検討するとともに、ヒトACFに対するアポトーシス誘導効果についても検討する。さらに、動物を用いて毒性試験などを行い、癌予防薬としての臨床応用に向けた開発を行う。 本年度は、昨年度合成したGA(γ-Glutamy1-S-(benzy1)cysteinyl phenylglycine diethylester)を用いて、ラットACFに対する抑制効果を検討するとともに、ヒトACFに対するアポトーシス誘導効果、ならびに動物を用いて毒性試験を行った。 2.方法と結果 (1)GAのラット発癌モデルにおけるACF抑制効果の検討 ラットにazoxymethaneを投与し、GAを連日腹腔内投与して3ヶ月後に全大腸のACF数を計測したところ、対照群では平均14.3±4.1個であったのに対し、GA投与群では平均5.7±1.9個と有意な減少を認めた。 (2)合成GAのヒトACF組織に対するアポトーシス誘導効果の解析 ヒトACF組織をGA(50μM)にて前処理した後、二次胆汁酸(Deoxycholic acid 5OOμM)にて培養してTUNEL法にてアポトーシスの解析を行ったところ、TUNEL陽性細胞は%に認められ、対照群(%)よりも有意に高い値であった。 (3)合成GAの毒性試験 GAをマウスに投与して急性毒性を検討したところ、LD50=700〜1000mg/kgと極めて高値であり、安全性の高い化合物であることが示唆された。また、14C標識したGAをマウスに投与して血中半減期を検討したところ、約90分であった。 3.結論 以上のことから、GST-π活性を特異的に阻害するGAは大腸癌に対する予防効果を有することが示された。さらに、GAはLD5Oが高く、安全性の高い薬剤であることが示唆された。
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