研究概要 |
Protoheme IXをFe,biliverdin,COへ分解するheme oxygenase(以下HO)のうち誘導型のHO-1には抗炎症作用、細胞保護作用が知られているが、その作用メカニズムは解明されていない。我々は誘導型酵素であるHO-1の生物作用を網羅的に解析し、未知の作用機序を検討するため,以下の実験を行った。分化誘導刺激によりマクロファージ様細胞に分化するヒト単芽球性リンパ腫由来細胞株(以下U937)に,ラットHO-1cDNAを組み込んだプラスミドベクターを導入しHO-1高発現細胞株を作成,これら細胞株間でGene chipによるtranscriptome解析により約7000種類のmRNAの変化をスクリーニングした。その結果の一つとして,マクロファージの細胞間接着に関与するLeukocyte function associated molecule-1(以下LFA-1)のsubunitであるCD11a,CD18双方のmRNAが減少していた。この結果に基づきCD11a,CD18各々に対する単クローン抗体であるTS1/22,TS1/18を用いて,各細胞株の細胞表面における接着分子の発現をフローサイトメトリーで検討した。するとwild type,mock transfectantの両者と比較してHO-1高発現細胞株で,CD11a,CD18両者の著明な発現低下が認められた。さらに100nM PMAで上記の各細胞株を24時間刺激すると,wild type,mock transfectantではTS1/22,TS1/18投与により阻害される細胞凝集が起こるが,HO-1高発現細胞株では全く起こらなかった。以上から,HO-1誘導は何らかの機序でLFA-1の発現減少及び活性化の両方を抑制することにより,LFA-1によるシグナル伝達機構を介して細胞機能発現を調節している可能性が示唆された
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