研究概要 |
リノール酸を加水分解し、ロイコトキシン(Lx),isoロイコトキシン(Lx^6),ロイコトキシンデイオール(Lx-diol)、isoロイコトキシンデイオール(Lx'一diol)をHPLCを用いて分離精製し実験に供した。 1)Lxによる肺動脈血管内皮細胞活性化-Nitric oxideとSuperoxide anion生成作用の直接証明 培養ヒト肺動脈血管内皮細胞はLx刺激によってNOをLx濃度依存性(Lx100nMから10μMまで)に生成した。これはL-NMMA存在下や細胞外Caイオン除去で完全に抑制された。なお、NOは化学発光法と[14C]L-citrulline測定法とによった。LxはeNOS刺激作用を保持するという結論を得た。また、培養ヒト肺動脈血管内皮細胞はLx刺激によってSuperoxide anionをLx濃度依存性(Lx10μMから100μMまで)に生成した。これはアロプノールやSOD存在下で有意に抑制された。なお、Superoxide anionはhydoroethidineのethidium bromideへの変換率で測定した。Lxは細胞膜キサンチンオキシダ・ゼを活性化してSuperoxide anionを生成するものと思われた。これらはbioactive lipidとしてのLxの細胞効果と考えることが出来る。 2)Lxによる細胞周期停止機構 Lxは培養ヒト肺動脈血管内皮細胞の細胞周期をG1期で停止させていることを既に報告した。その機序はCyclin-dependent kinase inhibitor(p161NK4A、p191NK4D, p21CIP1、p27KIP1のmRNAと蛋白増加)が関与していることも明らかにしてきた。さらに検討を加え、今年度はp161NK4Aの発現上昇にはEts/EtsおよびIdIが密接に関与することを見いだした。すなわち、Lxはpremature senescenceに関与すると考えられる結果であった。
|