研究概要 |
健常非喫煙者(対照群)150名、ブリンクマン指標200以上の喫煙者(喫煙群)150名の血液よりDNAを分離した。喫煙群では精密肺機能検査ならびに胸部CTを施行した。 非喫煙者30名、喫煙者30名のDNAを用い、cathepsin S遺伝子のプロモーター領域ならびにエクソンに遺伝子多型が存在するか否かをPCR-SSCP法により調べた。その結果、プロモーター領域に4箇所、エクソン1に2箇所、エクソン4に1箇所の多型(うち1箇所のみ既知)が検出され、シークエンスにより、このうち5箇所が1塩基多型、1箇所が、欠失型多型、1箇所が繰り返し型多型であることが判明した。また、ハプロタイプ解析により、これらはA, B, C3つの主要なハプロタイプ上に存在することが確認された。 次に臨床評価の完了した対照群102名、喫煙群108名において、各ハプロタイプの頻度と1秒率、肺気腫化スコア(LAAスコア:胸部CTより視覚法で測定)との関連を検討した。その結果ハプロタイプAは気腫化を促進し、ハプロタイプBは気腫化の抑制に関連することが示唆されたが1秒率との関連は明らかでなかった。さらにレポーターアッセイの結果、ハプロタイプAはIFN-γ刺激時の転写活性がハプロタイプBに比べ亢進していることが示された。これらの結果より、cathepsin S遺伝子多型は喫煙による肺気腫の進展に関連する遺伝的因子の一つであることが示唆された。 一方、cathepsin Sと同様に強力なエラスターゼ活性を有するMMP-9の遺伝子多型(C-1562T)と喫煙者の臨床パラメーターとの相関を検討したところ、T alleleを持つ群は持た,ない群に比べLAAスコアが有意に高値であった。これらの結果より、肺気腫の進展に関与する蛋白分解酵素の遺伝子多型は複数存在することが明らかとなった。
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