研究概要 |
cathepsin Sの主要な阻害物質であるcystatin Cプロモーター領域の遺伝子多型を直接シークエンス法により検討した。その結果、既知の3箇所の一塩基多型に加え、-66から-52の位置の15塩基の挿入型多型を検出したこれらの多型のハプロタイプ解析により、日本人cystatin Cプロモーター領域に3つの主要なハプロタイプ(A, B, C)が存在することが判明した。COPDの表現型との関連解析により、ハプロタイプBをもつ喫煙者はもたない喫煙者に比べ、胸部CT上の総肺動脈径が有意に拡大していた(p<0.01)。この2群間で血中cystatin C濃度に有意差は認めなかったが、血中cystatin C濃度は総肺動脈径と相関する傾向を認めた(p=0.05)。主要なメタロプロテアーゼとその阻害物質であるMMP-1(-1607G/GG)とTIMP-2(-418G/Cおよび_+853G/A)の遺伝子多型については、COPDの表現型と有意な関連を認めなかった。一方、主要なニコチン代謝酵素であるCYPS2A6については、東洋人に全欠損型多型が比較的高頻度でみられる。そこでこの多型の喫煙習慣ならびに肺気腫の進展に対する影響について検討した。全欠損型多型をもつ喫煙者の1日喫煙本数はもたない喫煙者よりも有意に少なく(p<0.05)、CYP2A6欠損によるニコチン代謝遅延が喫煙量を規定していると考えられた。さらに日本人喫煙者を喫煙継続群と中止群に分けた場合、両群間で生涯喫煙量と1日喫煙本数に差はなかったものの、CYP2A6欠損アレルをもつ頻度は喫煙継続群で中止群の約2倍であった(40% vs. 20%, p<0.01)。後者では前者に比べ肺機能低下と気腫化が高度であり、ロジステイック回帰分析により、CYP2A6欠損アレルをもつことは年令、喫煙歴とは独立に胸部CT上の気腫化に対し抑制的に働くことが示唆された。
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