研究概要 |
今年度はT細胞の機能解析を中心に研究を進めた。重症筋無力症(MG)におけるTh1/Th2バランスは胸腺摘出前のMG患者末梢リンパ球におけるケモカインシグナルがTh2優位にシフトしているのが術後除々に是正され,胸腺摘出手術が患者の免疫バランスを是正する働きがあることが示された.MG患者の経時的観察の結果,増悪時(クリーゼ)にはケモカインシグナルが再びTh2優位となり治療後に正常化する事も明らかになり,Th1型ケモカインCXCR3シグナルの強化がMG治療に有用である可能性が高くなった.MG胸腺の異常を明らかにするために胸腺T細胞でのケモカイン受容体発現を検討した結果,意外にもMGではTh1およびTh2型のケモカイン受容体を発現するsingle positive T細胞が増加していた.CCR2,CCR3,CXCR4などのケモカイン受容体発現もMG胸腺では著明に増加していた.一度抗原刺激を受けたCCR7陽性のセントラルメモリT細胞の著明な増加も明らかになった.これらよりMG胸腺のT細胞は免疫的に活性化した状態にあることが示された.CCR7陰性のエフェクタメモリT細胞へと分化する前,すなわち病初期での胸腺摘出術がより有効であるという臨床経験に合致するものである.これらの研究成果によって胸腺摘出後の免疫学的意義を明らかにした.多発性硬化症再発時の髄液ではセントラルメモリーT細胞が増加していた 本年度の研究により,神経免疫疾患ではCCR7陽性のセントラルメモリーT細胞が増加していることが明らかになり,CCR7阻害薬による治療への基礎研究の必要性が示された.14年度はケモカイン制御による治療を目指し,培養患者リンパ球によるケモカイン制御薬を投与して自己抗体産生とリンパ球活性化について検討する予定である.
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