研究概要 |
筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、運動ニューロンの選択的細胞死を惹起して筋萎縮をもたらす進行性難治性筋疾患であり、5〜10%は遺伝性である。平成12年度は、変異Cu/ZnSOD遺伝子を導入したトランスジェニックマウスモデルを用いて、まず近年注目されている変異SODの存在による細胞内沈着物質の生成機序について、マウスが発病にいたる30週齢までの各段階において、脊髄組織を免疫組織病理学的に検討し、細胞内沈着物質の生成時期とその免疫組織生化学的特徴について明らかにした。次いで、運動ニューロン障害と軸索輸送異常の関連について、マウス坐骨神経結紮モデルにおいて、順行性分子モーターと逆行性分子モーターの蓄積異常を基にfast axonal transportの異常を検討する一方、脊髄ラベル法により坐骨神経内のslow axonal transport異常についても検討した。さらにアポトーシスの観点からの運動ニューロンの生と死のシグナルアンバランスの問題を解決するために、各週齢ごとのマウス脊髄において、PI3KやAkt1,Bcl2といった細胞生存シグナルの変化と各種caspasesやBax,cytochrome Cといったアポトーシスシグナルの変化を、DNA損傷マーカーであるTUNEL染色などと比較した結果、本モデルにおいて早期から生存シグナルの低下が見られることを見い出した。これらの研究により、本年度研究の当初目標は達成されたものと考えられる。
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